最近、SNSやニュースで「オーストラリアは物価が高すぎる!」という声をよく目にします。
たとえば、
「マクドナルドのセットが日本では750円なのに、オーストラリアだと1,500円以上!?」
「コンビニで水を買ったら1本400円!? ありえない…」
こんな投稿がバズったり、「今、海外の物価が大変なことに!」という特集がテレビで組まれていたり。
確かに、日本円で換算すれば「高すぎる!」と感じるのも無理はありません。
2025年5月時点で、1豪ドルは約94円。つまり、何でも約1.5〜2倍に感じるわけです。
でも、そもそも「為替レートで換算」して物価を語るのって、正しいのでしょうか?
たとえば――
・日本円の仕送りで生活している留学生
・旅行中の観光客
・日本の貯金を切り崩して暮らしている人
こういった「円ベースで生活している人」にとっては、確かに円換算での物価は死活問題です。
しかし、オーストラリアに住み、こちらで収入を得ている人にとっては、話がまったく変わってきます。
物価の「高い・安い」は、為替ではなく“収入(特に最低時給)とのバランス”で考えるべきなのです。
そこで今回は、「最低時給」と「生活コスト(商品やサービスの価格)」を、日本とオーストラリアで比較しながら、「オーストラリアの物価は本当に高いのか?」を考えてみたいと思います。

ちなみに各国の物価や生活費を比較する際には、ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン氏やアンガス・ディートン氏も、「実質最低賃金」や「購買力調整後のデータ(PPP)」を用いるべきだと主張しています。

比較してみよう!「最低時給 vs マクドナルド」

世界各国の物価比較で必ずと言っていいほどテレビで引き合いに出させられるのが
「マクドナルドのビックマックセット」
ということで最低時給ベースで、日本とオーストラリアを比べてみましょう。
■ 日本
- 最低時給:1,055円(全国平均/2025年)
- マクドナルドのビッグマックセット:750円
→ 約 43分 働いて買える
■ オーストラリア
- 最低時給:24.10豪ドル(フルタイム、カジュアル/2025年5月時点)
- ビッグマックセット:約16.45ドル
→ 約 41分 働いて買える
これだけ見ると、日本もオーストラリアもビックマックセットの価格は同じに見えますね。
でも、もう少し視野を広げてみると…
日用品・家賃・ガソリン代も見てみよう
■ スーパーの食品
品目 | 日本 | オーストラリア $1=94円換算 | オーストラリア 最低時給換算 $24.10=1,055円 |
---|---|---|---|
牛乳1L | 約250円 | 約1.6ドル≒150円 | 約1.6ドル≒70円 |
卵10個 | 約300円 | 約6.6ドル≒620円 ※$8/12個をもとに計算 | 約6.6ドル≒289円 |
食パン1斤 | 約200円 | 約3.0ドル≒282円 | 約3.0ドル≒131円 |
為替レートで円換算するとオーストラリアは牛乳は安いが、卵などはやはり高いですね。
けど最低時給で換算すると、オーストラリアの物価は日本よりもだいぶ安くなってくることがわかります。
■ 家賃
日本では賃貸が一般的だが、オーストラリアではシェアハウス/シェアルームが一般的。
なので同条件で比較はできないが、東京での1Rとゴールドコーストでのオウンルーム(シェアハウス)で無理くり比較してみました。
家賃 | 東京 (1R) | ゴールドコースト (オウンルーム) $1=94円換算 | ゴールドコースト (オウンルーム) 最低時給換算 $24.10=1,055円 |
---|---|---|---|
賃貸(月額) | アパート:4~6万円 マンション:6~10万円 | 1,120~1,200ドル/月 (280~300ドル/週) ≒10.5万~11.3万円 | 1,120~1,200ドル/月 (280~300ドル/週) ≒4.9万円~5.3万円 |
ここ最近、オーストラリアでは住宅不足により家賃が高騰しています。
そのため、最低時給で換算しても、オーストラリアの家賃の高さが際立っていることがわかります。
■ ガソリン価格(1リットル)

ガソリン | 日本 | オーストラリア $1=94円換算 | オーストラリア 最低時給ベースで換算 $24.10=1,055円 |
---|---|---|---|
レギュラー(91) | 178円 | 約1.80ドル≒169.2円 | 約1.80ドル≒78.79円 |
ハイオク(98) | 189円 | 約2.05ドル≒192.7円 | 約2.05ドル≒89.74円 |
ディーゼル(軽油) | 157円 | 約1.91ドル≒179.5円 | 約1.91ドル≒83.61円 |
ガソリン価格を為替レートで比較すると、日本とオーストラリアではほぼ同じ水準です。
しかし、最低時給を基準にして比較すると、オーストラリアのガソリンのほうがかなり割安であることがわかります。

日本は1998年~1999年がレギュラーの価格が過去最安値で91円台でした。
そう考えるとオーストラリアのレギュラー1Lの価格$1.80≒78.79円(最低時給換算)は激安です!

実は「贅沢品」以外はそこまで高くない
たとえば、外食(レストラン)はたしかに高め。1食30ドル以上かかることもあります。
でもこれ、高時給の国で人件費が高いから当然なんです。
逆に言えば、自炊すればめちゃくちゃ安く済むし、外食=贅沢っていう感覚はわりと世界共通です。
それでも最低時給換算で外食の費用を考えると、実は日本とそんなに違いはなかったりします。

日本は外食が安すぎますね!
結論:現地の収入があるなら「最低時給換算」で考えよう
もしあなたが今後、
- ワーホリでオーストラリアに行く
- 留学して仕事をしながら生活する
- 永住・移住を考えている
という立場なら、ぜひ覚えておいてほしいことがあります。
「為替レートの円換算だけで物価を判断すると、誤解する」
「現地で収入があるなら、“最低時給ベースの感覚”で物価を見よう」
たとえば、日本で1,000円のものが、オーストラリアでは15ドル=1,500円だとしても、
時給も2.5倍あるなら、負担感は同じどころか軽くなることもあります。
海外に出るときって、どうしても「物価高い」「生活できるか不安」って思ってしまいがち。
でも、冷静に数字を並べて、「その国の中でのお金の価値」を見てみると、見えてくる景色は変わってきます。
最後に
物価の高さを語るとき、つい「円でいくら?」という考え方に引っ張られてしまうのは自然なこと。
でも、ちゃんと稼いで、現地で生活するなら、こっちの「時給・収入ベース」で物価を見ていく視点を持ってほしいなと思います。
ちょっと視点を変えるだけで、「オーストラリア、意外と暮らしやすいのでは!?」って思えるかもしれません。

オーストラリアの物価は意外と高くない。
というより、日本の最低時給があまりにも低すぎです!