オーストラリアでワーホリをする場合、都市部で人気のある職種と言えばホスピタリティ業界(カフェ、レストランなど)ではないでしょうか。
英語があまり得意でない人や、特別なスキルがなくても比較的採用されやすく、また短期雇用も積極的に採用している業界なので人気があります。
そんな、ホスピタリティ業界の中で最近たまに耳にするのが、カフェやレストランでのABN雇用です。
通常、カフェやレストランでの仕事と言えばカジュアル・パートタイム・フルタイム雇用が一般的ですが、稀に
「うちはABN雇用だからABN(Australian Business Number)取ってね」
なんていう所があります。
これって合法なの?それとも違法?
皆さん、おわかりでしょうか?
この辺の事情は意外と知らない人が多いのではないでしょうか!?
そんなわけで、この記事ではカフェやレストランでのABN雇用について解説していきます。

みなさんがABNで働く際に損をしないために、またこの記事を通してABN雇用の理解が少しでも深まればと思っています。
この記事は、オーストラリア政府のホームページに掲載されている情報を基に書いており、法律的なアドバイスを提供するものではありません。
現在、飲食店でABN雇用されており、これに疑問がある場合は、フェアワークスに直接相談してみてください。英語に自信がなくても、通訳を通じて相談することができます。
カフェやレストランでABN雇用は合法?
「飲食店の面接に行ったら、ABN取ってくださいと言われた・・・」
これ、最近よく聞きます。
さて、これは合法なのでしょうか?違法なのでしょうか?

答えは「合法の場合もあれば、違法の場合もある」です。
とは言いつつも、違法の場合が断然多い気はします・・・
どういった場合に合法/違法になるのかを説明する前に、まずは「Sham contracting(偽装請負)」について理解をしておく必要があります。
Sham contracting(偽装請負)とは
Sham contracting(偽装請負)に関してはFair Work Ombudsman(労働基準監督署に相当)のサイトに明記されています。
Sham contracting(偽装請負)とはなんぞやをひとことで言うと、
「会社が労働者に対して、従業員であるにもかかわらず請負業者(ABN雇用)にさせること」
従業員として会社に雇用された場合、その人は以下の制約で業務に従事します。
– 会社の指示と管理課で業務を遂行
– 仕事をするために必要な道具や設備が提供される
– 決められた時間勤務する
それに対して請負業者(ABN雇用)は会社に雇用されているのではなく、会社に対してサービスを提供します。このため、請負業者は自分で報酬(時給)や労働条件を交渉し、また一度に複数のクライアントと契約して働くことができます。
※請負業者と従業員の違いはコチラ(Fair Work Ombudsman)を参照
なので、仕事の仕方が明らかに従業員と同じであるにも関わらず、会社が請負業者として雇った場合は違法となります。

カフェやレストランでの仕事で偽装請負いをした場合は違法ということですね!
そして偽装請負した場合は、もちろん高額な罰金があります!
個人の場合:$18,780
従業員15人未満の会社の場合:$93,900
従業員15人以上の会社の場合:$469,500


では、どういった場合に飲食店でABN雇用が合法になるのか、または偽装請負いとしてABN雇用が違法になるのかを例をあげて解説していきます。
例:ABN雇用が合法な事例
あるレストランのオーナーが毎週金曜日に「ラーメンDay」を開催しようと考えています。ところが、その店では誰もラーメンを作るノウハウを持っていません。そこでオーナーは毎週金曜日だけラーメンを作ることができる日本人をABN雇用で雇うことにしました。
この場合、ABNで雇われる人は明らかにお店の従業員とは異なる仕事を求められています。
その人はお店に対して「ラーメンを代わりに作る」というサービスを提供しています。
なので、雇用形態はABN雇用が妥当であり、違法性はありません。
例:ABN雇用が違法な事例
あるカフェはビーチ沿いにあるため、毎年夏の時期(12月~2月)になるとかなり観光客で忙しくなります。そこで、オーナーはこの繁忙期である3ヶ月間だけ人を新たに入れようと考えています。
募集をかけて面接に来た人に対しては、ABNが必要であること、支払を受けるには会社に請求書を送る必要があることを伝えています。また、仕事をする上での条件には以下のことが含まれています。
– 管理者の指示の下で業務を遂行
– 仕事をするために必要な調理器具、設備、制服は全て店のものを使用
– 決められた時間勤務
この場合は、もはや業務内容は従業員と変わりません。
なので、オーナーはABN雇用は妥当ではなく、従業員として雇用すべきです。
応募者は自分を従業員として雇うのが妥当であることをオーナーに伝える必要があり、それでもオーナーが「あなたはABN雇用だ(請負業者)だ!」と言い張る場合は、偽装請負いに該当し、違法となってしまいます。

ホスピタリティ業界で通常のスタッフと同様の仕事内容であるにもかかわらずABN雇用の場合、その職場はかなり怪しいことをしている可能性がありますね。

飲食店オーナーがABN雇用をしたがるワケ
偽装請負いは違法であり、バレた場合は罰金があるので、雇用主からしたらリスクしかありません。
それにもかかわらず、なぜ雇用主はABN雇用したがるのか?
それは、ABN雇用に大きなメリットがあるからです。
以下、その理由。
- 最低賃金以下で雇用しても問題なし
- 残業レートや土日レートを支払う必要がない
- スーパーアニュエーションを支払う必要がない
- ワークカバー(労災保険)を支払う必要がない
- 業種別Awardを遵守する必要がない
ABN雇用の場合は最低賃金以下の給与であっても違法性がないため、フェアワークスに訴えられるリスクがないと思い込んでいる場合がほとんどです。

雇用主からするとABN雇用では最低賃金以下の給与であっても違法性はなく、フェアワークスに訴えられるリスクもないから、ABN雇用にしたいと考えてしまうのがほとんどの場合です。
ですが、その一方で偽装請負いに関して訴えられるリスクがあるので、雇用主は違法なABN雇用はすぐに辞めるべきですね。
まとめ
「カフェやレストランでのABN雇用には合法な場合と違法な場合がある」ことをご理解いただけましたでしょうか?合法なケースは限られており、多くの場合は違法のリスクが伴います。特に従業員と同じ仕事内容やルーチンワークでABNが求められる場合には注意が必要です。
違法なABN雇用を行う職場は、給与トラブルや契約解除など、後々問題が起こる可能性もあります。できるだけ信頼できる雇用条件の職場を選び、安全で安心な環境で働けるようにしましょう。
気になる点や不安なことがあれば、専門家やサポート機関に相談してみてください。
あなたのオーストラリアでの働き方がより良いものになることを願っています!
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