最近多くの家族が海外に移住するのを見ますが、それと同時に何かしらの理由で日本に帰国する家族もよく目にします。赴任期間の終了、高齢の親の介護のためなど日本に帰国するにも色々な理由があります。
独り身の学生や社会人であれば帰国に際して身辺整理さえすれば良いのだが、子供がいる場合はそう簡単ではありません。帰国後の子供の学校をどうすべきかと心配する親をよく見かけます。
帰国を考えている友人も、子供が日本に帰ってから学校に馴染めるのかをかなり心配しています
そこでこの記事では、帰国後の子供の学校として帰国子女受け入れ校が選択肢としてあることを知ってもらうために、それがどういう学校であるかを紹介したいと思います。
また、帰国子女受け入れ校をネットで調べるとほとんど私立しかでてこないが、国立や公立もあることを知って欲しいのであわせて紹介しています。
僕が実際に通っていた、帰国子女を受け入れている国立小学校と公立中学校についても紹介をしています。
帰国子女受入校は意外に多い
日本で帰国子女を受け入れている小・中・高・高専は意外に多く、なんと912校もあります。
その内訳をみてみるとこんな感じ。
小学校 98校(国立6校、公立23校、私立69校)
中学校 318校(国立校11、公立20校、私立287校)
高校 472校(国立6校、公立142校、私立323校、インターナショナル1校)
高専 24校(国立22校、私立2校)
小学校に比べて、中学・高校が多いですね。
また、中学・高校の帰国子女受入校は、圧倒的に私立の学校が多いのが見て取れます。
全国の帰国子女受入校(小・中・高・大)は帰国子女教育振興財団の帰国子女受入校より検索できます。
帰国子女受入校のタイプ
帰国子女受入校と言っても実は大きく分けて二つのタイプがあります。
一つは、帰国生の特設クラス(国際学級)を設けている学校、そしてもう一つは帰国子女は受け入れるが帰国生のクラスを設けずに通常のクラスの中で個々に応じたカリキュラム(日本語指導)を組んで対応する学校です。
それでは、この二つのタイプの学校の違いについて述べていきたいと思います。
帰国生の特設クラスを設けている学校
帰国生特設クラスとは、帰国生だけで構成されたクラスです。帰国生は日本語(国語)や社会といったその他の科目に関しても一般生と比べて習熟度が劣っていることがあります。このため特設クラスを設けている多くの学校では、少人数制を採用しており、一人ひとりに細かい指導をし、早期に日本の教育に適応できるようにしています。
海外の現地校に通っていた子供が日本の学校に編入すると、まず日本語の壁にぶち当たります。たどたどしい日本語しか話せなかったりするため、性格も内気になってしまう子供もいたりします。その点、帰国生だけのクラスだと気持ち的に子供はかなり楽に感じますね。
帰国生特設クラスに在籍している生徒は日本の教育にある程度慣れた段階で、一般クラスに移行させている学校がほとんどです。
海外に長期滞在していた子や、海外で日本語補習校に通っていなかった子にとっては、帰国後の学生生活に不安を感じることが多いので、こういった帰国生特設クラスがある学校に入学するのが最も良いのではないかと思います。
ただし、この帰国生だけの特設クラスを設けている学校は非常に少なく、ほとんどが国立(小学校、中学校)か私立の学校(中学校、高校)だったりします。多くの帰国生を受け入れている学校は、次に述べる帰国生を特別扱いせずに一般生と同じクラスにして学生生活を送らせています。
帰国生の特設クラスを設けていない学校
公立で帰国子女を受け入れている学校のほとんどは帰国生の特設クラスを設けていない学校になります。こういった学校に編入した場合、在籍は一般クラスになり、一般生徒と同じ授業を受けることになります。これでは普通の学校と変わらないと思われがちですが、一応帰国子女に対しては通常授業とは別に補習授業を設けているところもあったりします。
また、稀に帰国生に対して外国語の会話力の保持教育を行うところもあります。ただし、外国語の会話力の保持教育を行っている学校のほとんどが英語(授業が一般生徒とは別)に対してであり、他言語に対しては対応していないのが現状です。
帰国生を受け入れている学校にもそれそれ特徴があるので、学校選びの際には特別カリキュラムがあるのか、帰国生に対してどのようなサポートがあるのかを良く調べる必要があります。
帰国子女受け入れ校って実際どうなの?
小学校・中学校の帰国子女受け入れ校は私立が圧倒的に多いです。とは言え、私立は学費が公立よりも高いイメージがあるかと思います。では、実際のところどうなのかを見てみたいと思います。
こちらは文部科学省が調査した平成30年度の公立と私立の学習費です。
公立学校と私立学校では学費の総額の差が小学校では5倍、中学校では2.9倍もあります。私立に通わせた場合、公立よりも学費がかなり高額になることがわかります。子供が一人ならまだしも、2~3人いたら私立に通わせるのはかなり難しくなるのではないでしょうか。
学費を見てしまうと、子供を帰国子女受け入れ校に編入させたいが、私立はさすがに厳しいと思ってしまうのがほとんどではないでしょうか!?
そういう方には国立や公立の学校を選択肢にいれてみるとよいと思います。
そこで、ここからは僕が実際に通っていた帰国子女を受け入れている国立の小学校と公立の中学校がどんな感じだったかを紹介したいと思います。
もう数十年前の話にはなってしまいますが、今でも教育システムなどはそれほど変わっていないので、参考になればと思います。
東京学芸大学付属大泉小学校(国立)
日本に帰国して、僕が編入した学校は東京学芸大学付属大泉小学校という国立の小学校です。
この小学校は帰国子女が日本の教育に順応することができることを目的に、帰国子女の特設クラス(国際クラス)が作られています。
僕が子供の頃は、国際クラスは4~6年生まででしたが、今では3~6年生まであります。
特徴
この学校の特徴としては、一般学級との交流が盛んに行われることです。在籍は国際クラスではあるが、一般クラスにも仮の席があります。毎日の掃除や遠足や運動会などの際には仮に配属されている一般クラスの生徒として行事に参加します。
国際クラスの人数は少人数制で、いろいろな国から帰国してきた帰国子女がいました。日本語がかたことの児童もいれば、海外で日本語補習校に通っていた児童もいます。ちなみに日本語補習校に通っていた児童は比較的日本の教育に馴染むのが早いので、そういう子は早々に国際クラスを卒業して、仮に配属されていた一般クラスに移籍することになります。毎日の掃除や各種行事で一般クラスの生徒とは顔なじみになるので、移籍する際もスムーズに移行できます。
帰国子女の特設クラスがあるので、日本語に特に自信がない海外子女にとってはかなりおススメの小学校ではないかと思います。日本語のボキャブラリーが少なくても、漢字が書けなくても、日本語の発音が変でも恥ずかしがる必要はないです。なぜなら周りはそんな子ばかりだからです。そして一般クラスの子もそれを理解しているので、それをバカにする児童はほとんどいません。
編入試験
東京学芸大学付属大泉小学校の国際クラスに編入するには試験(面接と筆記調査)があります。内容は以下の通り。
この試験に関しては昔と少し変わったような気がします。少なくとも僕は作文なんて書いた記憶がありません。僕がやったのは先生のと面談と国語(ひらがな・カタカナ・漢字)のテストでした。このテストに関しては、落とすための試験ではなく、児童の国語力の把握の意味合いが強いと思われます。
今でも覚えていますが、僕は小学校5年生にしてカタカナで『フライパン』が書けませんでした。漢字に至ってはほぼ書けなかったと思います。
通学区域について
通学区域は自宅から学校まで40分以内です。公共交通機関の利用も可なので、電車とバスを利用して通学してくる児童もたくさんいます。ちなみに、多くの日本の小学校が実施している集団登校はありませんでした。
授業
国際クラスだからと言って、授業は英語ではなく全て日本語です。英語圏ではない国から帰国してくる児童もいるので、先生も英語を話すことは一切ありませんでした。
授業の内容は一般クラスでの授業と大して変わらないが、かなり基礎(小学校低学年レベル)から学習をすることになります。児童の中には海外在住中に日本語補修校に通っていた子もいれば、ひらがなやカタカナをほとんど書けない子もいたりしますが、僕がいた時にはレベル別にクラス分けなどはなかったです。ちなみに、日本語補習校に通っていた児童のほとんどは早々と一般クラスに移籍していきました。
国際クラスの多くの児童は国語を苦手としているので、国語力向上のための宿題は毎日あります。僕が通っていた頃は、家で日記を毎日書くことが唯一の宿題でした。今思えば、下手なりに毎日日本語で文章を書いていたことで短期間で国語力が見違えるように伸びたんだと思います。
ちなみに今でも日記を書かせているかどうかはわかりませんが、毎日音読と読書の宿題はあるようです。
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実際に通ってみての感想
僕はこの国際クラスに小学校5年生の夏休み明けに編入し、そこで卒業するまで過ごしたわけですが、その1年半で見違えるくらい日本語は上達したと思います。ただし、やはり漢字に関しては小学校1年生レベルだったのが、小学校3~4年生レベルまでしか上達しませんでした。それでも、短期間で日本の教育に馴染めたことや日本特有のしきたり(敬語とか)が学べたのは大きかったですね。
また、日本語学習以外で良かった点、悪かった点はこんな感じでしょうか。
東京学芸大学付属大泉小学校の国際クラスを卒業した児童の現在
これに関しては、当時自分が在籍していた学年とその前後の学年しかわかりませんが、参考までに記載したいと思います。
国際クラスにいた多くの児童は、その後別々の中学に進学し、高校・大学を卒業して当たり前のように就職しています。就職先は僕が把握している限り、グローバル企業、日本の有名企業、テレビマン、銀行マン、国家公務員とそれなりに有名なところに行っています。また、拠点を海外に移して活躍されている方も何人かいます。
帰国子女は帰国直後、日本語で苦労しがちですが、大人になってからは第二外国語を活かしてワールドワイドに活躍されている方が多い気がします。
もし子供が小学校の高学年で日本に帰国し、かつ海外で日本語補習校に通っていなかった場合は、東京学芸大学付属大泉小学校の国際クラスを編入先として一つの候補に入れては如何でしょうか。
帰国子女を受け入れをしている都内の公立中学校
多くの外国大使館が置かれている港区をはじめ、数は少ないがいくつかの区には帰国子女をうけいれている公立中学があります。僕もその内のひとつの公立中学校である中野区立中野東中学校に入学をしています。
中野東中学校は中野第三中学校と中野第十中学校が統合してできた中学校です。僕が通っていたのは中野第三中学校のときです。
特徴
中野東中学の前身である中野第三中学は昭和49年より帰国生の受け入れをはじめています。公立中学校にしては帰国生受入の歴史がある学校です。
現在は帰国生のみならず、外国人生徒(日本以外の国籍の生徒)も多数在籍しているようです。
入学方法
中学生で帰国して編入してくる人もいれば、小学生の時に帰国してその後、中学に上がるときに中野東中学に入学する人もいるようです。後者の場合は、帰国後の期間などが考慮されて入学できるかを教育委員会と相談の上判断されるようです。
通学区域について
帰国生に対しては、中野区外(近隣の練馬区、杉並区、板橋区等)であっても受け入れているが、1時間程度で通学可能な生徒に絞っているようです。
授業
中野東中学校では帰国生がなるべく早く日本の学校生活に馴染めるよう、学区域の生徒と同じクラスに席をおきます。ただし、英語などの一部の授業においては帰国生を抜き出して、海外ではあまり学ぶ機会がない社会や理科の学習をしながら日本語の学習を行うこともあるようです。
また、週1~2回外部指導者による日本語指導も行われています。
実際に通ってみての感想
僕が通っていた時は帰国生は学年に2~3人くらいしかおらず、帰国生に対するケアとしては土曜日に国語の補習授業があるだけでした。普段の授業は他の生徒と同じであり、国語の読み書きが苦手な僕はそれなりに大変だった記憶があります。
現在はHPを見る限り、帰国生や外国籍の生徒も増えているようで、これら生徒に対する教育や生活面のケアは昔と比べてかなりしっかりしているような印象を受けます。
まとめ
この記事では、日本の帰国子女受け入れ校がどのようなものなのかを紹介しました。
参考になったでしょうか?
帰国子女を受け入れている学校は意外に多く、また選択肢としては私立だけではなく国立や公立もあることを知ってもらえればと思います。
ちなみに今回紹介した国立の小学校、公立の中学校の実態や雰囲気はあくまでも僕が子供の頃のものです。当時よりも海外で生活している邦人は増えており、それに伴い帰国子女の数も増えています。なので、特に公立の学校に関しては在籍している帰国生は昔と比べて多いだろうし、学校側も昔よりは帰国生に対して手厚いサポートをやっていると思います。
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